或る人の体験談。アメリカでビレイし合う仲間を見つけようとしたら、グリグリに代表されるオートロックタイプの確保器を使えないと、「俺を殺す気か!」と相手にされなかったらしい。ジムに行けば行ったで、グリグリ使用法の講習を受けないと、リードクライミングをさせてもらえないとも聞く。
私は専らATC派。クライミングを始めて間もない頃にはエイト環を使ったこともある。数ピッチの懸垂下降にも使えるし、なんの不満もなかった。けれども、氷川屏風岩・C峰のような傾斜地や、小川山マラ岩・舳岩のような露出感のある場所でビレイしていると、「もし自分がすっ転んで、手を離したら……」と危機感をいだくようになった。
「土日とも雨の週末があったら、ジムでグリグリの練習をしようよ」と松ちゃんと話していた。ついに機会がめぐってきた。場所はストーンマジック。ショップでグリグリを買って、百戦錬磨のY崎店長に使い方を教えてもらおうと目論んだ。
ところがY崎さんは今日は留守とのこと。グリグリ勉強会は頓挫か? いやいや、ちゃんと技術書やWEBで下調べしてきた。自習に切り替える。クライミングはat own risk。有料の講習会でもない限り、自分で出来るだけ勉強してくるのは当然である。いや、たとえ有料の講習会であっても、もし講師が怪しいことを言ったら突っ込むとか、「こういう方法もあると聞きましたがどうでしょうか」と対抗できるくらいにしておくべきであろう。
松ちゃんはジムに常設のトップロープでグリグリを使ったことはあるらしいけれど、ロープのセットの仕方さえ知らないと言う。予習もしていない。やれやれ……。初めてグリグリを触る私が何故か講師役となる。
取扱説明書の日本語版は株式会社アルテリアのサイトで公開されている。パッケージに同梱されているペーパーと同じである。
リードで試す。最も標準的な「カムがロックしないように右手で押し込み、左手で繰り出す」方法は難しい。ちょっと勢いよくロープを繰り出すだけでカムがロックしてしまう。取扱説明書の「素早くロープを繰り出す」には≪末端側のロープを握っている手を器具に移動し、カムを手で固定し、もう一方の手でロープを素早く引き出します。カムを固定している手は素早く末端側のロープに戻して下さい≫とある。これも難しい。テコの働きにくいカムの根元側を押し下げるには相当に握り込む必要がある。そんなに握りこむと、末端側のロープはお留守になってしまう。「注意」にある通り、≪安全のため、この方法は使用を制限し、素早く行う必要があります。パートナーの墜落時にビレイヤーが『グリグリ』を強く握り締めてしまう可能性があり、その結果、末端側のロープのコントロールを失う危険性があります≫。おまけに手指を器具に巻き込む危険性がなきにしもあらず。
ここまでは想定の範囲内? 奥の手を調査済みである。
JFAのサイトに「グリグリの使用法――新しい提案」として、8a.nuへのリンクが貼ってある。現在はリンク切れしているようだ。とりあえず「GriGri techniques」というページで読むことが出来る。
「ペツル社が推奨するテクニックではない。自己責任で試す必要がある」旨、断り書きがあるけれど、いつの間にかペツル社が公式に「NEW TECHNIQUE」として紹介を始めた。
8a.nuのどこかで「なんてこったい、これは俺たちが発表した方法じゃないか!」という書き込みを見かけた。
さて、実際に試したところ、クリップ時の繰り出しは良好。ATCより繰り出しやすいかもしれない。ただし、親指だけでカムを押さえるのは不安定。右側面に突起があるので、そこに人差し指か中指の腹を押し当てると安定する。いくら安定するからと言っても、グリグリ全体を握ってはマズいであろう。
まずは外岩のウォームアップルートで慣れよう。もちろん、
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- オンサイトトライ
- クリップが厳しいルート
- スポーツルート以外(ボルトが脆弱)
では使わないほうがよい。
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