小川山、チンタラー奮闘す

前夜発、いつもの宿。

朝方まで雨。屋根岩はガスに覆われている。気温は10℃以下。動き出す気がしない。朝食のあと、昼まで不貞寝する。

正午ごろ、石楠花遊歩道エリアをのぞいたら、人っ子ひとりいない。岩はシケシケ。

水晶スラブ下ボルダーを探す。黒本を見ても日本100岩場を見ても、位置関係がよくわからない。ソラマメスラブや水晶スラブあたりの傾斜地を30分くらいさ迷った。「石の魂」よりも高度が低い緩傾斜帯へ下りていくと、やっと見つかった。なーんだ、キャンプ場から直接行くほうが近いんだ。やはりボルダラーはいない。水晶スラブへアプローチするクライマーが何人かそばを通り抜けたのみ。

今日のお題は、犬岩の「犬小屋」。ルーフ奥のガバからSDスタート。

抜け口の右側は上部の草付きから染み出して、水滴がポトポト落ちている。シートを敷くと、水溜まりができた。時々シートをはたいてふるい落とす。仰向けに寝そべると、上から下から濡れた。濡れた手を服で拭うと服の方が濡れていたり、せっかく乾かした指先が空中で水滴をダイレクトキャッチしたり。とにかく難儀した。右手の中継で使いたいホールドが濡れているので、顔の正面にある大粒の結晶を指皮に引っかけることにした。右中指に穴があいたので、テープで保護した。

リップの水平ガバへデッドポイントし損ねると、もろに背中から落ちる。高さはないものの、ちょうど木の根が突き出している。ためらい落ちして、背骨近くに当たり、ギャーッと喚いた。水晶スラブを登っている人に聞こえたと思う。マットを持ってこなかった代わりにザックを敷く。さっきの失敗でよけい怖くなった。何度もためらい落ちしては痛い目にあった。この1手だけやっても出来ないようでは埒があかない。

うーむ。コーヒーを飲みながら指皮を冷ます。切り札の「動画を撮るから登っちゃえ」作戦を決行することにした。独りでドヨーンとなったときには、これが意外と効くのである。新調したばかりのカメラを三脚にセットする。

一度も出来ていないムーブが、スタートから繋げて成功し、そのまま完登できた。ほっ。

ちなみに上部は直上するのか、「YMルーフ」に繋げるのか、黒本ではよくわからなかった。私は、マントルが手強そうな直上を選んだ。

濡れていたこと。マットなしで痛い目にあったこと。登れてしまえば、より充実するスパイスとなった。

コメント

  1. コミ より:

    カメラ、遊んでますねぇ~。
    格段に画質が良くなりましたね。
    「動画を撮るから登っちゃえ」作戦、使わせてもらいます。

  2. 無名のK より:

    ビデオを回した途端に登れたことって、
    けっこうあるんですよね。
    本当は 1,920×1,080 (FULLハイビジョン)で撮ったのですが、
    あまりにも編集が重いので 640×360 に落としました。
    それでもレンズの口径が大きい分、画質が良くなったようです。