「モンスターマン」、今日も進展なく。
近くの平たい岩に腰掛けて、岬の釣り人を眺め、昼日中から黄昏れていたら、すぐ右上の断崖から声がかかった。
「マット、落としてもいいですか」
クライマーらしい人影。
「あっ、どうぞ」
お風呂マットを束ねたマットが投げ下ろされた。今の人はもしや……。
吉田和正さんその人であった。
昨日、昇仙峡から城ヶ崎に移動して、今シーズン初登りとのこと。いや~、平日に城ヶ崎の静かなエリアに通っていると、こんな日がいつか来るかもしれないと思っていたけれど、こんなに早く実現するなんて。
吉田さんからプロジェクト課題を「やってみませんか」とのお誘い。おいおい、天下の吉田さんとサシでセッションだぞ。ちょっとだけ触らせていただく。一見、ブランクセクションのようなフェースに点在するホールドをつなぐ面白いライン。やはり岩を見る目がちがうなぁ。
「マット1枚じゃ怖いでしょう」
とマットを貸してくれたので、私は再び「モンスターマン」に戻る。右手大穴へのランジは確率よく決まる。右足ヒールで左手の中継ホールドをとり、引き付けるだけ引き付けて、左手をデッドポイント……できず。何度となく繰り返した。せっかくマットが増えたのに心がブレーキをかけている。
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