シーズン真っ只中、しかも貴重な雨の中休みであるから、平日でもクライマーの姿が絶えない。土曜日にもいらしていたU家さんとお連れの方、そして消防士クライマーの4人の方、都合8人が小山ロックの客となった。
アプローチを歩き終えると、首筋から汗が滴る。暑くなく寒くなく、クライミングに好適な気候であるが、湿度が高いようだ。午前中、甲府盆地に蒸気がわだかまっているせいであろうか。
ウォームアップとムーブ確認を兼ねて、ボルト4本目と5本目でテンションをかけつつ、最上部まで登る。トウフックを試す。うーむ、甲のあたりまでしっかり押し込むには、それなりに腕力を使うなぁ。いったん押し込んでしまえば、右手も左手も落ち着いてシェイクできるけれど……。微妙だ。
1トライ目は12時過ぎ。5本目のクリップまで最速のムーブでこなしたおかげで、レストポイントではこれまでで一番余裕があった。さらに工夫したムーブ《左足を手前のカチ(三日月の穴の隣)に振り戻す》を繰り出して、左手大穴を余裕のリーチでスタティックにとらえる。右手クロスでピンチをとり、左手アンダーを差す。うわっ、浅い。もっと左奥を持たなくてはならなかった。右足トウフックに頭を占領されていたが故のつまらないミス。以前にもこのミスはしでかしたっけ。修正が利かない。ままよっ、と右足トウフックをかまそうとするが、がっちり決まった状態で腕力が尽きてフォールすると、激しく捻挫する可能性が高い。かつて城ガ崎のパンピング・アイアン?のルーフ越えでそいつをやらかして、数ヶ月を棒に振った経験がある。テンション。これは弱気ではなく、冷静な判断であったと思う。
2トライ目は15時過ぎ。トウをねじこむ余力があるなら、手を進めたほうがよい。そのつもりで最上部、右手クロスでピンチをとらえたものの、やはり1トライ目よりもよれている。今度こそ弱気のテンションか。そのとき取り付きから武道家の気合のような怒号が轟いた。
「手を出せ!! 手を出せ!!」
消防士のM月さんである。おそらく太刀岡山の麓で昼寝をしていた犬も飛び起きたであろう、腹の底から発する声。えてしてガンバコールは「お前はもうよれている」という死の宣告に聞こえるものであるが、初めてそうでない経験をした。
左手アンダーを差し切る。右足を穴に乗せる。右手を寄せる。左手をフレークのサイドに送る。左足スローパーに飛び移る。
「そこでキョン!!」
なんで知ってるの。丸く浅い穴に右足キョンで6本目にクリップ。右手を一段上のピンチ。弾みをつけて、左手を遠いサイドへ。右足をたたんで、アウトサイドを決める。いつもバシッと決めているカンテはたき……が止まるイメージは全く湧かない。左手も右手もパンパン。「落ちま~す」
やれやれ、最後に弱気が出てしまったけれど、良い経験をした。M月さん、ありがとうございました。
M月さんの気合注入の効果たるや瞠目すべきものがあり、GO ON THE BOLT(11d)をトライしていたお仲間も、肘が上がってプルプル、いつテンションあるいはフォールしてもおかしくない状態から気合一閃、ガバに飛びつき、完登してしまったのである。恐るべし。
コメント
昨日は、どうもお疲れ様でした。つい、人の応援で熱くなると仕事の時の声が出てしまうので…。お恥ずかしいですo(^-^)o もう、Kさんは『カリスマ』のムーブ完璧ですよ。現在、カリスマに関しては、日本で一番上手いと自信を持ってトライして下さい! new13クライマーの誕生を楽しみにしてます~(^0^)/
M月さん、お疲れ様でした。奇しくもこのブログの119番目のエントリとなりました。いやぁ、あの声量、普通の人には真似できません。お返しをしたいけれど俺たちのキャラじゃないね、と松ちゃんと話したものでした。また太刀岡山で熱い登りを見せてください。
惜しかったですねー。
文章読みながらも手に汗でした。
次回はぜひ。
ちなみにもちもちさんのコールすごいですよね♪
私は、まったくムーブもできていない時に一度太刀でご一緒させていただいたので、とてもガンバコールをいただける状態ではありませんでしたが、ぜひRP体勢になった時に、あのコールを背に受けて登りたいもんです。
次のトライを見据えて体力温存ばかりしていた私ですが、初級者のとき以来久しぶりに出し切るクライミングをしました。ひと岩場にひとり、M月さんに居てもらいたいですね。