はじめてのエナジー、五里霧中

はじめてのエナジー

オーナーのW引さんは、だんだんボードで何度かお見かけしたことがある。耳をそばだてた折々の会話が、のちに「フリークライミングの真髄」として出版された。“クライミングでは0度から89度までは主に平面的な動きがつかさどり、91度から180度までは主に立体的な動きがつかさどる。ただし、難しくなってくると両者はその範囲を越え、新たなものに再編成される”……といった哲学的な考察が斬新である。巻末には海外クライミング向けの英会話集がある。

腕がはっています。(落ちるかもしれないので)よろしく。

I’m pumping. Watch me.

ちょっとだけおろしてください。

Lower please. / Down a bit.

という具合。同著に友情出演している女性クライマーT井さんによれば、この英会話集を読んだアメリカ人が爆笑していたらしい。一読の価値あり。

そんな記憶を揺り起こしながら、武蔵野線に乗った。武蔵浦和駅からのアプローチで遭難。プリントアウトしておいた地図を忘れたのである。はじめてのジムには必携のカメラも忘れた。携帯のカメラで代用しよう。

▼グレード表。青系統が多い

▼こんなグレード表も掲示されていた

▼2階から見下ろすリードエリア

▼2階ボルダーエリア

今日はなんだか身も心もシャキッとしない。忘れ物が多いわけだ。こんなときはえてして……。5級で早くもチョンボ。なかったことにして先へ進む。お買い得そうな2級も1撃を逃した。集中力に欠ける。

一昨日の「にら」岩で、せっかく貸し切りなんだから1手でも2手でもやっておこう、と30分ほど格闘した。地面からほとんど足が離れないので、あまり登った気がしなかったけれど、実際には相当に指を消耗していたらしい。ジムでこんなに調子が悪いのは久しぶりだ。

トライ数を限定せず、1級を1本登ろう。保持力真っ向勝負ではなく、体操的に登れるタイプの課題を探す。あった。150度壁の銀色矢印。打つ、打つ、打つ。今日の保持力のギリギリのところで完登できた。

帰途、また遭難。おまけに会員証と傘をジムに忘れた。やはり今日はどうかしている。戻ろうとして、さらに遭難。もう完全に方向感覚がない。このあたりは線路や道路が三角形に交錯しており、どこを基点にどちらへ向かえばいいのか、混乱しやすい。霧雨が降り出す。悲惨。へとへとになってジムに戻り着いた。

もうやだ。中浦和駅から帰ることにする。こちらは駅前の雑踏が近く、迷うことはなかった。

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