先日、太刀岡山で10年以上ぶりに「北風小僧」を登ったとき不思議な感覚を味わった。「出だしでガバアンダーを差す」「ポケットが多い」くらいは憶えていたものの、ラインを勘違いしていたくらいだから、事実上のオンサイトトライである。テンションした箇所までは自分としては最適なムーブであり、2回目のトライでも変えなかった。しかし、10年以上前に同じムーブをしたとはとても思えない。現在のように足先行型の手順を組み立てる発想はなかったはずだ。きっと手ばかり先行して力任せに身体を引き上げていた。それがどんな手順だったのか今となっては思い出せない。
プロの将棋指しは言う。
コンピュータのようにしらみつぶしに、読める範囲にあるすべての手を読む、ということは人間にはできない。だから無駄な手を読まず、どう捨てるかが大切になってくる。読めないから読み筋を絞る、全部を読もうとすることは非効率的で、無駄な読みをいかに早く捨てるかが勝敗を分けるカギになる。
無駄な手を読まない、と言うよりは、無駄な手は最初から頭に浮かばないようになるらしい。
クライミングでも同じことが言えるのではないか。上達するにつれて、非効率なムーブや手順は思い浮かばなくなる。思い出せなくなる。「パフォーマンス・ロック・クライミング」で一躍?有名になった「レミニセンス効果」の一種だ。
※この記事は、きん さんの「忘れるムーブ」に触発されて書きました。
コメント
オンサイトトライで、いろいろと試した挙句、2トライ目で記憶が混乱して、二撃を逃したり。10年ぶりのトライでいきなり登れたり。いろいろありますね。ただ、11前半だと、k師も私とかもオンサイトできてもおかしくないグレードなので、なんとも断言できないのかなぁというところですね。とりあえず、今の仮説、信じるところを思い込んで、つっぱしる。間違えていたら、即直す。ですね。
11前半だと、たいてい「現場処理」で対応できるんですけどね。夏のヌメリ、岩質の不慣れ、リードクライミングのブランクを考慮して、相場よりも3~4グレード低いところから始めてみたものの……。オンサイトクライミング自体への慣れも必要だと思います。