カサメリ沢、雨模様、1トライ目は冴えていた

■ 2009/07/18(土)

きん さん号に便乗させてもらい、窓を叩く雨粒を見ながら、一路カサメリ沢へ。私は今年初めての標高1500メートル越え。モツランドに一番乗り。

「レーザーズ・エッジ」

1番手の きん さんが事も無げにヌンチャクをかける。2番手は私。昔オンサイトしたけれど、今日はボルト4本目から5本目のあたり、カンテに右手、右足で無風の鯉のぼり状態。進むことも戻ることもできなくなり、テンション。カンテにこだわらず、左壁に左足をつけばなんてことないのであるが、自分の悪い癖である「一人限定」が出てしまった。2回目のトライで完登し、そのまま上部の「オリーブ」をうかがうものの、小ハングを右に迂回しようとすると崩壊しそうな巨大フレークに体重をかけざるを得ず、左に迂回しようとするとコーナー間際の風化した脆そうなガバを使わざるを得ない。恐ろしくて進めない。自分が落ちずに済んだとしても、もし岩を落としたら、下に居る人たちがヤバイ。ギブアップしてロワーダウン。と言いながら、そのあと完登した方にヌンチャクを回収してもらったのだから現金なものだ。雨の日でも登れる貴重なエリアであるが、取り付きに居るだけで危険なエリアではなかろうか。

▼3番手のM代さん


「めんたいこ」

ボルトラインに忠実に登ろうとするとホールドがない。14レベル? テンション。カンテ左側の濡れた脆そうなガバ地帯に迂回するのが正解。これまた「一人限定」の罠にはまった。もういいです。回収。

「たらこ」

岩の弱点をついて、ムーブが多彩。上部のガバ地帯では縦クラックが良いアクセントになっている。最上部は雨で濡れるが、ガバなので大丈夫。このエリアでいちばん面白いルートではなかろうか。もっとカッコイイ名前をつければ良かったのに。挫けたモチベーションが一気に持ち直した。

1トライ目でボルト1本目から2本目へのボルダームーブを突破し、左手カチで微妙なクリップをこなし、遠い右手エッジを気合でとったものの、左上ラインを試みて行き詰まる。テンション。ボルト2本目から3本目は直上してから左にトラバースするのが正解。

2撃する気満々であったが、ボルト2本目のクリップで罠にはまった。湿度が増して、不意に指先がはじかれそう。ふだんルートクライミングをしない者は、クリップ筋(静的な保持力)が鍛えられておらず、どれくらいまでなら耐えられるか指先からのフィードバックを利用する能力が低い。思わずヌンチャクをつかんでしまった。ホールドにチョークをのせて、よく磨き、ロワーダウン。ロープを結び直して、完登できた。

▼「たらこ」の全貌

振り返ると、原生林に強い雨が降りしきっている。取り付きはいつの間にかジムのように人だかりがしている。

湿度はいや増す。きん さんは「たらこ」のボルダームーブに苦戦。途切れ途切れにしかムーブが出来ない状態だったのに、4トライ目で集中力を発揮して、核心に成功した途端、そのまま終了点までつなげてしまった。お見事でした。やはり外岩ルートを登りこんでいる人は「つなげる」のが上手い。

▼「たらこ」を完登する きん さん

M代さんも「たらこ」に参戦したのであるが、いつの間にかお昼寝モード。がっつり小一時間眠ったあと、むくっと起き出して、さくっと完登……と思いきや、「眠い」と一言。そのまま、きん さん号の客となり、予定通り一足先に韮崎駅から帰京したのであった。

▼午睡を堪能するM代さん

植樹祭の芝生広場で初めてのテント泊。

■ 2009/07/19(日)

天気予報では昼から降る。しかしあくまで予報、あくまで下界(ナツカシイ響き)の話。山中では一日中、小雨が降ったり止んだり、ときおり日が差す、まったく先が読めないコンディションであった。コセロックの「トータル・リコール」でウォームアップして、オランジュ岩に移動。

「ボトレイアン」

雨上がりくらいのコンディションなら快適に登れるルート。中間部で思い切りレストできて、最上部が核心。左手、右手ともアンダー気味のサイドカチの体勢から、次をどうするか。きん さんはリーチを利して一気に頂点のガバを取りに行くムーブを固めたものの、完登トライで右手のカチが欠けてフォール。余計な1トライを出すハメに。私は左足ヒールで振られを止めて、左手を目の前のカンテに寄せ、右手をずっと奥のサイドホールドに送る安全ムーブを固めて、2撃できた。ヒールのちょい掛けで振られを止めるような小技が咄嗟に出ないと、オンサイト能力は上がらないなぁ。

「あすか」

11bなわけないだろッ、と思わずグチりたくなるルート。最新の「100岩場」の11cを支持したい。いや11dでも良いのでは。大フレークの上部、ボルト7本目で浅いフィンガーポケット2つをピンチ持ちして、ヌンチャクを掛けてクリップ。シビれた。我ながら良く出来た。ヌンチャクが掛かっていれば、下のガバから伸び上がってクリップできる。さらにその上のスラブが絶品。ボルトより左側に身体をずり上げる。掛かりの良い右手で体勢を安定させるとクリップできない。左手は細かく、腰のあたりなのでバランスが悪い。渾身のクリップ。ちょっとずつこんな状況にも対応できるようになってきた。

核心ムーブは出来たので2撃できるかと思ったけれど、右手の縦カチがヌメってムーブを起こせなくなった。核心ムーブを1回しかやらず、きちんと固めなかったのが敗因。昼から降るという予報を信用して回収。コンディションが良いときに、マスタースタイルでさくっと登りたい。

「あみだくじ」

きん さんのトライに便乗。この岩は黒いのでいつも湿っているように見えるけれど、実は今日のようなコンディションでも登れる。1トライ目で一気に4本目のボルトまで行けた。そこから右手をカンテに出して、左手を縦ガバに寄せたところで行き詰った。完登は出来なかったものの、左壁にキョンを決めてムーブを繰り出すなど、今回いちばん冴えたトライであった。上部核心のムーブを固める。2撃する気満々。核心ムーブを頭の中で反芻する。ところが、2トライ目ではなんと下部をどう登ったか忘れており、3本目のボルトでテンション。1トライ目はなんだったんだ。よくあるパターンではある。すぐにロワーダウンして、ロープを抜く。少し休み、再トライしたものの、カンテの右手縦カチがやけにヌメっている。かなりパンプアップもしていた。明らかにスタミナ切れ。連日のリードクライミングは久しぶりで、「あすか」をトライした疲労も蓄積していた模様。

きん さんと「あの縦カチ、ヌメってたよね」と慰め合う。ところが、そのあとZCCのGAIDAさん?が着実な登りで完登。ヌメっているはずの右手縦カチで5本目をクリップされていた。途中、さっきどうしたっけ、と迷いながらも現場処理で対応。お見事でした。と同時に我々二人の言い訳は無効に。

▼「あみだくじ」を登る きん さん

天候不順な土日にもかかわらず、フルに登ることが出来た。両日とも、1トライ目は冴えていた。2トライ目は集中力に欠けるのか、1トライ目ですんなり抜けたところでもたもたしたり、テンションしたりした。克服すべき課題である。

コメント

  1. 詳細な記録ありがとうございます。「あすか」は、湿気ってると最後のクリップ厳しいかもしれませんね。私も、日に当たった熱々のホールドでキワドイクリップをした記憶があります。たらこは、途切れ途切れからいきなり繋ぐと言っても、3p目クリップできれば誰でも登れちゃいますよ。

  2. 無名のK より:

    きん さん、お疲れ様でした。「たらこ」は下部ボルダーと2本目のクリップで消耗すると、3本目までのムーブがつながらない可能性が高いと思いますよ。私は渾身でした。「あすか」「あみだくじ」ともコンディションが良いときにさくっと登りたいですねぇ。

  3. こーたろー より:

    昨日は3.5時間の渋滞サインがでていましたので、例の道試させてもらいました。途中何度も「ここであってるのかな?」と思わせる道ですね。1時間は短縮できました。情報ありがとうございます。
    また、どこかでお会いしましたらよろしくです。次回は一緒に登りましょう。

  4. 無名のK より:

    こーたろーさん、いらっしゃいませ。お役に立てて何よりです。カチが苦手な私は頻繁に きん さんとカチ談義に花を咲かせるのでした。カチラーとして定評のある指、そのうちじっくり観察させてください。

  5. まさよ より:

    「あの縦カチ、ヌメってたよね」となぐさめ合う。
    >2人の様子が目に浮かび笑えました。
    たらこ、速攻クライミングで冴えた1本でした。
    もう外岩リハビリも終わりですね!そろそろ本気モード!
    って、真夏じゃーん。またよろしくお願いします。

  6. 無名のK より:

    まさよ さん、お疲れ様でした。あわただしいような、のんびりしたような不思議な一日でしたね。贅沢な午睡、私も真似したいです。風邪を引かぬよう、薄手の寝袋をザックに忍ばせておきましょう。