夏のど真ん中に、日本アルプスのど真ん中へ。心にあるプランを秘めつつ。
8月13日の早朝に東京を出立し、正午過ぎに上高地に着いた。バスターミナルや河童橋は十年一日のごとく賑わっている。明神岳や前穂岳の頂稜にはガスがわだかまっている。夕方には天気が崩れそうだ。横尾まで行く算段の足が、徳沢で止まった。もし明日も悪天で停滞したら? 徳沢ロッヂで入浴すれば、テントで引きこもるのも快適だろう。次の日の行程が一時間増えたとしても。……と言うわけで、徳沢に泊まった。
徳沢に来たのは5年以上ぶり、テント山行自体が5年以上ぶりだ。昭文社のエアリアマップに載っている既成コースを何日もかけて踏破したり、ピークハントするような休日の過ごし方にはあまり興味がなくなっていた。この夏は外岩クライミングをオフ期間とした代わりに、ゆったりと自然に親しむのもいい。北アルプスや南アルプスの主稜線はあらかた踏破しているので、新鮮味のある場所はあまり残っていないものの、あるスパイスをふりかければ、なかなか美味しい料理ができるのではないかな、と。
夜、右隣のテントでは年配者3人組が、65歳の記念登山を祝福し合っている。奥又白の池まで登り、雪渓を横切り、昔攀じた五峰あたりの壁を眺めて来たらしい。体力を使い果たした。酒宴はやめて、早々に就寝する。明日の朝、食べたければ食べればいい。テントが濡れていようが何だろうがザックに詰め込んで文明世界へ戻ればよいのだ。体力が不安だったよ、と最年長者。いや、足取りを見ていて大丈夫だと思いましたよ、とリーダー格。同じ話を繰り返し、讃え合う。沈黙。面倒くさいけど、お茶ぐらい飲もうか、とまた活気づく。静かな会話は小一時間つづいた。遠くで、大学のワンダーフォーゲル部らしい一団が控え目に山の歌や校歌を合唱している。いろいろな人がいろいろな思いを抱いて訪れているのだ。
さて、自分の思いは?(笑)
いかにテント生活を快適にするか。軽量、高性能、かつ安価な装備に思いをめぐらしている。
今回、導入したのは100円ショップで売られているLEDライト。最初は出入り口のジッパーに吊るしたけれど、なんとか天井に吊るせないものか。私のテントには天井にモノを吊るすループがない。はたと思いついた。軽量なLEDライトは粘着テープで拵えた仮設の張り綱に吊るすことが出来るではないか。やはり真上から照らす光はいい。ただし、強い雨脚でテントが振動すると、テープが剥がれてポトリと落ちた。真下で鍋物をしてはいけない。夜8時にスライドロックを押し込み点灯状態にしておいたら、朝6時にまだ光っていたので感心。常夜灯としては十分である。常夜灯? 私はちがうけれど、真っ暗だと眠れないと言う人は居る。どこかで読んだ話では、真っ暗だと周囲への警戒心が強くなる。月明かりくらいの光があるほうが安心して眠れる。原始以来の本能だという。
そんな軽量化の一方で、マッサージ用のテニスボールを2個持ってきた。持て余した時間をふんだんに使って背中や腰をグリグリ。最近日課の前屈ストレッチングも怠らず。バラードの「溺れた巨人」を持ってきたけれど、1ページも読まなかった。夜は無為に更けていく。
二日目、8月14日は悪い予想が当たって終日、雨模様。下山してくる人達はレインウェアを着ている。停滞。一日中寝ていた。
テント四隅の目止めが劣化したらしく浸水した。要修繕。
三日目、8月15日は、朝晴れ上がっていなかったら下山、と決めていた。昨日よりは稜線が垣間見えるものの、間欠的に雨粒が落ちてくるのは変わらない。計画したコースを不快さに耐えつつ踏破するのは今回の目的ではない。美味しいところだけつまみ食いしたいのだ。勿体ない気もするけれど、帰るとしよう。このあたりの潔さはボルダラーっぽい。ザックの底にしのばせたアナサジ・ベルクロとチョークバッグが泣いてるぜ。あ、いかん、ゴホッゴホッ、ムニャムニャ……。
紅葉の頃にリベンジするかどうか思案中。
コメント
おかえりなさい!
まさか、アルプスまで行っているとは・・・!
ケーコさんは御岳で
「あそこに居るのK師じゃない!?」
って5,6回言っていましたよ(苦笑)。
アナサジとチョークを持っていっているってことは・・・。
ニヤリ。
就寝時には「固めのお風呂マット」を背中に敷きましたが、寝心地は良くなかったです。次回行くとしたら、柔らかめのお風呂マット2枚にします。いろいろ応用がききますからね。(何の?)