遠きにありて

仕事中ふとGoogle Mapで故郷をさまよう。長いこと帰ってない。ストリートビューで、窓から田圃が見えるMOS BURGERやら、昔のジョギングコースやら見て回る。やがて実家を離れて、一人暮らしの街へ。おいおい大学の構内まで侵入できるぞ。あー、あの煉瓦の柱や、腰掛けたベンチ。記憶に埋もれていた細部が芋づる式によみがえる。いろんなことがあった。幕間には色恋沙汰のひとつやふたつ。山と海にめぐまれた地方でやたらと走ったこと、登ったこと。砂袋を詰めたザック(当時はキスリング)を背負って、裏山へ駆け登った。頂上のベンチに倒れ込んで、死にそうな呼吸を整えて、汗みどろの顔を上げると、眼下には夕暮れの海と、ネオン煌めく港町の絶景が広がっていた。日本三大夜景のひとつはこの山ではなくて、彼方に見えるあの山であるが、明日はそこへランニングで駆け登るのだ。なんだかナルシスティックにカッコ良かった。あの頃のような熱情を取り戻せないもんだろうか。電子的なイリュージョンに誘われて、ゾワゾワした一日であった。

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