クライミングシューズのソールはしばらく使って表面が薄く剥がれたくらいから本来の性能を発揮すると言う。それを待つのはもどかしいので、私はサンドペーパーで削ることにしている。本格的に使い始めたあとも、時々メンテナンスとしてサンドペーパーをかける。
そうして最大限に性能を発揮できる状態にして、左右のシューズの爪先同士を押し当ててみると、ソールの特徴を体感できる。ペタペタとした粘着感が強い一番手はやはりFIVE TENのSTEALTH HF。二番手はSTEALTH ONYX。この二者は、サンドペーパーをかけてから日を置いても粘着力が持続する。SPORTIVAのXS GRIPもペタペタ感が出るものの、STEALTHと比較すると極々表面だけ粘着する感じで、それも日を置くと失われる。MAD ROCKはXS GRIPに似ている。ROCK PiLLARSのZEALやJUMPに貼られていたVISION 228はお世辞にも粘着感があるとは言い難い。TRIOPの零に貼られていたCLINGはVISION 228に似ている。EVOLVのDEFYに貼られていたTRAX XT-5は最下位で、削ろうが磨こうがどうにもならない。BOREALとSCARPAは実機なしのため不明。
ROCK&SNOW第041号で評判が良かったROCK PiLLARSのGRIPPINは、サンドペーパーで表面を削ってもペタペタ感があまり出ない代わりに、ひたすらボソボソしている。テスター諸氏に好評を博したのは何故だろう。
ROCK&SNOW第028号でファイブテン社長のチャールズ・コールが語っている。
フリクションとグリップは、実は微妙に違うのです。どんなにツルツルに見えても、岩には凹凸があります。そのわずかな凹凸をグリップするのがいいラバー。(中略)フリクションをよくするには、ゴムを柔らかくするしかない。これはグリップという考えとはまったく違っています。つまり、よくないラバーは暖かいところでしかフリクション性能を発揮することができないのです。気温が下がると滑りやすくなるのはそのためです。
もしかすると、GRIPPINはグリップ性能が優れているのかもしれない。
ファイブテン社長はこうも語っている。
ONYXはまったく新しいラバーです。フリクションも、気温が低い状態ではHFより優れていると思いますよ。
ONYXにはペタペタ感とボソボソ感が共存している。ペタペタ感がフリクション性能で、ボソボソ感がグリップ性能である、と仮定すると、ONYXが低温化でも滑りにくいらしいことや、GRIPPINはペタペタ感が弱いにもかかわらず滑りにくいらしいことが説明できる。GRIPPINという名称はまさにグリップ感を指しているのではないか。XS GRIPもそうだ。
コメント